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サマソニ&フジロック 第一弾ラインナップ発表 雑感

日本における2大洋楽フェス SUMMER SONICFUJI ROCKのラインナップが第一弾発表された。昨年に話を戻すとフジロックは20年目の節目から総決算的な意味合いが強い年であった。またサマソニは2003年に初めてソールドアウトしたときのヘッドライナーRadioheadを、フジロックは伝説の第一回目のトリを務めたRed Hot Chili Peppersを最大の目玉として置いてくるというお互いの手札の中で最強のカードを切ってきた年でもあった。そういう意味でも単純に自分が観たいのが出るか以上に今年はそれぞれがどういう手を打ってくるのか個人的には非常に楽しみだった。そして2月に入り、サマソニは虫食いからの出演者によるリークという史上稀に見るゴタゴタを経て6日に、フジロックは10日に渋谷の巨大スクリーンに映す形で第一弾ラインナップを発表した。そのラインナップやそれにまつわる様々な意見に対して思うところがあったので今回は書き記したい。

 

発表はサマソニの方が先だったが、フジロックの方から取り上げたい。

 

ヘッドライナーにAphex TwinBjork準ヘッドライナーの枠にはLCD Soundsystem、Lorde  Major Lazer、 Queen of The Stone Age、The xx。他にはBonobo、Catfish And the Bottle Men、Lukas Graham、Rhye、Sampha、Sturgill Simpsonなどが名を連ねている。

 

初めて見た時の感想は率直に「今から予定を空けなければ!」。まず準ヘッドライナー扱いのアクトはそのほとんどが海外ではトリを務められるようなアーティスト。これはとんでもない。そして今年早くも新作を発表し好評を得たBonobo、Samphaはもちろん、グラミー賞の主要部門にもノミネートされたLukas Graham、Sturgil Simpsonらもまさに2017年に観ることに意味がある存在。そういう意味でもまさに今観たいアクトが揃えられている。第一弾のラインナップとして考えれば間違いなくここ10年で最高だと思うし、これからまだまだ追加されるとなると第一回の重圧ゆえに呼べるだけ呼んだというあのラインナップを超えるのではないかという期待さえしてしまう。

 

言及しておきたいのはこれらのラインナップの多くはSmashフジロックや単独公演での招聘を手掛けたアーティスト達であるということ。豊富な資金力でもなく偶然の産物というわけでもなくSmashというイベンターがコツコツ積み上げてきた信頼や人脈によって実現されたものであるのは間違いない。やはり「ローマは1日にしてならず」なのである。

 

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ただ気になることもある。まず一つはSamphaを除く全てのアーティストが非黒人で揃えられていることだ。これは決してポリティカル・コレクトネス的なことを言いたいのではない。はっきり言って今の音楽シーンはブラックミュージック全盛。その勢いはチャートにしろ各音楽メディアが発表する年間ベストにしろ保守的と言われるグラミー賞のノミネーションを見ても明らかである。そんな時代のラインナップとしては少し偏りがあるように思える。とはいえ日本でそういった音楽の人気が日本ではまだまだ追いついてないのは認めざる負えない。それにまだ第一弾の発表なので批判するには時期早々。とりあえず追加発表を待ってからにしたい。

 

そしてもう一つはやはりヘッドライナーだ。Aphex TwinBjorkというエッジーな表現者を揃えてきたことから攻めているとも取れなくはないがどうにも90年代の人という印象は拭えない。またどちらも海外の大規模な音楽フェスティバルでヘッドライナーを務めるのは難しくなっている。そういう意味でも正しいスロットであるとは言い難い。しかしそうは言ってもやはりフェスティバルにおいて動員は最も大事な要素。Bjorkは、前回出演した2013年の土曜日の動員が例年より高かったことから考えても未だに日本での人気は高い。その神通力ゆえのヘッドライナーという扱いは妥当かもしれない。

 

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ただAphex Twinはどうだろう。海外ではField Dayのような小中規模のフェスティバルでもなければヘッドライナーに配置されることはまずない。日本でも直近の来日になる2009年のサマソニではソニックステージのトリという扱い。この時は入場規制もかからなかったという。この時点でまず一つ疑問符が付く。確かに今回のツアーは久々のオリジナルアルバム「Syro」(2014年)発表以降初めてのツアーということもあってキャリアの中でも特別感はある。しかし果たしてそれが大きな動員につながるのだろうか。

 

これが2列目でガクッと格が落ちるようなラインナップなら納得はいく。しかし先ほど述べたように海外でヘッドライナーを務めるアーティストも今年は幾つかいる。例えばLCD SoundsystemQueens of the Stone Ageといったアーティストを代わりにヘッドライナーとして起用したとしてもAphex Twinより動員は大きく劣るだろうか。そうとも思えない。それにThe xxに至ってはまだ20代だ。若返りという意味でもそちらの方が将来的にはメリットな気がする。

 

しかも彼は今も昔もカルトスターだ。それこそ過去には犬小屋に入ったり、ステージ上に現れなかったりしながらと通常では考えられない方法でプレイし、それはもはや彼の魅力として受容されている。そんな男にあのだだっ広いステージはどう考えても似合わない。セットなどの理由でどうしてもグリーンステージでなければいけなかったとしても昨年の電気グルーヴのようなクロージングアクトという扱いでも構わないはずだ。

 

以上のことからヘッドライナーとして起用する明確な理由がみえない。となるとつまりAphex Twinはヘッドライナーに抜擢されたわけだ。しかし抜擢とはキャリア25年以上のミュージシャンに対してすべきことだろうか。個人的には全くそうは思わない。そこに関しては後で自分なりの意見を述べる。

 

 

そしてサマソニだ。

ヘッドライナーにCalvin Harris、準ヘッドライナーと思われる位置には5 Seconds Of Summer、Justice、Liam Gallagher(大阪Only) 、Phoneix、Royal Bloodなどの顔ぶれ。その下にはCirca Waves、Kungs、G- Easy、Zala Larsson、ピコ太郎などがいる。

 

こちらもまず初めて見たときの率直な感想を言うと「そうきたか!」という驚きの気持ちだった。この驚きにはポジティブな気持ちもあればネガティブな気持ちも入り混じっている。 

 

まず一番の驚きだったのはやはりヘッドライナーのCalvin Harris。多くの人がロックバンドを予想として挙げる中、DJをヘッドライナーに起用してきたのはとても驚いた。なんせサマソニ始まって以来初めてのことだ。ただここには特にサマソニの常連であろう人々から批判が集まった。色々な批判があったが「ヘッドライナーにふさわしくない」という意見には真っ向から反対したい。

 

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欧米ではすでにEDMブームは下火になっているからという理由で低く見られがちだがそんなことはない。確かにEDMと呼ばれる音楽は欧米では以前ほどの勢いはなくなっているが、Calvin Harrisをその枠組みだけで語ってしまうのは違う。昨年はフェスティバルに3つしか出てないので印象は薄いかもしれないがその3つともヘッドライナー。しかもその内の一つは世界で最も大きいフェスの一つ、Coachella Festivalだ。それに彼は基本的にラスベガスでプレイしているためあまり外での公演は多くない(昨年はたったの9公演)。そういう意味でも激レアである。

 

ULTRA JAPANやEDC JAPANで呼べば良いという意見も散見したがこれも的外れ。呼ばないのではなく恐らく呼べないのだ。それらに出ていたDeadmau5やZeddなどと同等に扱われがちだがDJとしてのギャラは世界一とやはり格が違うことが伺える。歴史の長さからある程度の動員が予想できるSummer Sonicだからこそ成し遂げられたブッキングなのではないだろうか。

 

またDJ=人の曲をミックスして流す人というイメージがあるかもしれないが彼は非常に優秀なポップミュージックの作り手なのである。単純にヒットソングの数を持ってもDJ界隈の中では抜きん出てるし、昨年も「How Deep Is Your Love」、「This Is What You Came For」、「My Way」という3曲がヒット。UKで初ヒットとなった「Acceptable in the 80s」から数えると10年、アメリカでも特大ヒットとなったRihannaとのコラボシングル「We Found Love」から数えても6年間第一線で活躍していることになる。今年もFrank Oceanとのコラボ曲等がも発表される予定とその勢いはまだまだ止まりそうにない。

 

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ラインナップ全体の傾向として一番強いのはポップ系アクトの流れ。5 Seconds of SummerやCharli XCX、Kesha、Dua Lipa、Zara Larssonなど例年に比べても今年はポップ色の強いサマソニになりそうな予感する。正直に言うと、個人的にはそこまで惹かれないがここには未来の可能性が詰まっていると感じている(詳細は後述する)。この傾向にも「客寄せパンダ」と揶揄する批判があった。しかし日本でも武道館公演を成功させた5 Seconds of Summerを除けばはっきり言って「客寄せ」と言うほど客を寄せられるとは思えない。何なら同じ規模でも90年代ロックバンドを呼んだ方がよっぽど動員は期待できる。こっちの方がよっぽど挑戦的なラインナップだとさえ思う。

 

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そしてかなり雑な言い方だが英仏のロック系アクトの流れもある。サマソニ本編にはPhoneix、Royal Blood、Cicra Waves、High Tyde、Declan McKennaが、ソニマニにはKasabian、Liam Gallagher、Justiceが登場する。Liam Gallagherの位置には疑問が残るがPhoneix、Justice、Kasabianは海外のフェスでもかなり良い「スロット」に配置されておりこれらのためだけに行くという人も一定数いそうだ。一口にロックと言っても幅があり統一感は薄いが、逆に言えば熱心なロックリスナーなら一つくらい好きなアクトがいるのではないか。とはいえその層を確実に動員させるにはこれではまだ地盤が弱いのでこのラインはこれから増強されるのではと推測する。

 

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もう一つ地味にあるのが00年代USパンクの流れ。SUM 41を筆頭に、Good CharlotteNew Found GloryPennywiseと今年で終了してしまうパンクロックフェスPUNK SPRINGに登場しそうなバンドが4つも並んでいる。この流れは英仏のロック系アクトが統一感が薄かったのと対照的にこちらは割りと統一感があるのが印象的。誰に向けられているのかが明確と言える。だが00sに流行ったUSパンクを2017年に有り難がる理由が正直全く見当たらない。それに去年The OffspringPanic! At the Disco等によるポップパンクの流れはマウンテンステージでやったばかりで食傷気味。断られてしまったと噂されるGreen Dayがいる前提のラインナップという話があるが、だとしたら全く気が利いてないしそれは「Green Dayナメんな」という話である。

 

全体としてはやはりこれを豪華というのは贔屓目に見ても無理がある。ポスターでは大文字(ヘッドライナー)、中文字、小文字によって扱いを分けているが、中文字8組の中でもかなり差があり、何となく豪華に見えるよう水増ししているという見方も可能だ。ただ自分の考えとしてはラインナップの傾向は決して間違ってないと思う。

 

  私はいわゆる「スロット」の問題については厳しく、例年以上に多かったポップ系アクトの多さに関しては好意的に捉えてると述べた。この2つは自分の中で完全に繋がる。

 

そもそも「スロットって何?」という人もいるだろう。スロットとは簡単に言うとどのアーティストがどのステージにどの順番で出るのかということ。スロットの是非は基本的に海外との比較によって語られるわけだがそれを指摘すると「アメリカが正しいのか」みたいな批判がある。最初に断っておきたいが少なくとも私はそういう意図で言っているわけではない。いや、そういう意識が無意識的に働いてる可能性は完全には否定できないがそんなつまらない理由だけではない。なぜそれを前提にする必要性を感じているのか。それは「海外とのズレ」が結果として「洋楽」マーケットの縮小へと繋がったと考えているからだ。

 

海外とのズレと言っても2種類あると考えている。まず一つは海外でアリーナもしくはスタジアム規模で公演を行うようなビッグアーティストの人気のズレ。これは90年代以降、日本国内における邦楽と洋楽の比率が圧倒的に前者に偏りすぎた点が大きい。その要因を語ると長くなるのでここでは割愛したいが、その成れの果てが現在のAdele、Beyonce'、Justin Timberlake、Drakeといった世界で最も売れてるようなアーティスト達でさえワールドツアーに日本を組み込まないという状況。たとえオーストラリアを訪れても日本の頭上を通り抜けて次の地域もしくは母国へと帰ってしまう。日本に寄るのが当たり前だった時代(約30年前)なんてまるで嘘のようだ。

 

もう一つはそれこそフジロックに行くような比較的熱心な洋楽リスナーが聴く音楽のズレ。この原因も様々であるが特にフジロックには責任の一端があると思っている。97年に初開催されたフジロックは少なくとも初めのうちは時代を捉えたラインナップだった。しかし00年代に入るとロックというジャンルから以前ほど台風の目になるようなアクトが出てこなかったことやフェスティバルが回を重ねるごとに客層も高くなってしまったなどの要因で、時代性を捉えることよりも90年代のアクトを中心に据えることで動員の維持を優先する選択をした。しかし時代は10年代に突入し、より世代交代の必要性が切実になった時に数少ない00年代以降に大きな成功を収めたロックバンドArcade Fireをヘッドライナーにするも大きな動員には繋がらなかった。これはあの選択をしたことでオーディエンスの認識を更新できていなかったからに他ならないと思っている。

 

だからといってまた90年代アクトを揃えるのは堂々巡りな気がする。その時その時はそれでも動員できるかもしれないが、5年後10年後もそれで大丈夫だろうか。RadioheadほどのビッグネームならともかくUnderworldがトリではもう若いリスナーは惹かれない。やはりフェスティバルを存続していくためにはフェスティバル自体が新陳代謝していかなければいけないことは自明だ。それを示す意味でもスロットの新陳代謝は非常に重要だと思う。 

 

今の洋楽を取り巻く状況を少しでも良い方向に持っていくためには2大洋楽フェスティバルがよりラインナップを棲み分けていけばいいと思っている。そもそもサマソニは都心に近く日帰りも可能な立地なため若い人たちも気軽に行きやすし、フジロックのように中身を規定してしまうような名前でもない。その点を生かしてビルボードのヒット曲を聞いているようなライトに洋楽を聴いている層へアプローチしていく方向性で良いのではないかと思う。フェスは単独公演より楽しめる度数が高いし、ここが良い入り口として機能すればきっと市場全体の底上げに繋がるはずである。フジロックは逆に都心から離れた山の中で行われるという特性上交通費、宿代等お金がどうしてもかかる。よって客層は自然と熱心な音楽ファンに限られる。ブッキングの方向性としてはそういう熱心な洋楽リスナーが満足するようなラインナップを用意するのが正解だろう。フジロックには常に音楽が好きな人にとっての憧れの場所であり続けて欲しい。

 

サマソニはマーケットの拡大を、フジロックはマーケットの正常化の役割を担って欲しい。最近特にそこに未来があるのではないかと考えていたが、図らずも今年は第一弾ラインナップを観る限り両フェスともそれに近い路線になっていて個人的には喜ばしい。とはいえ一気にそれを試みると恐らく動員的に厳しくなりそうな予感がする。フジロックもラインナップこそ素晴らしいが動員面ではちょっと想像がつかない。そういう意味でも今後のラインナップでどこまで挑戦し、どうバランスを取ってくるのかという視点も含めて楽しみに待ちたい。